季節掛け
掛軸には、年中掛けられる図柄と、四季折々に掛ける図柄があります。
草花も各種ありますので、開花に合わせて室内で季節を感じられてはいかがでしょうか。
日本は南北が長いため、開花時期が1ヶ月前後ズレる地方があります。
年中掛け
水墨山水、竹に雀、四君子、四季草花、不老長春、孔雀、鷹、虎、龍
春掛け
時期: 3~5月
梅花、菜の花、桜花、牡丹、藤花、桃花、躑躅、春蘭、連翹、木瓜、木蓮
※梅花は早春の花なので2月~3月、桜花は3月下旬~4月下旬
夏掛け
時期: 6~8月
百合花、枇杷、桃、紫陽花、石楠花、アヤメ、菖蒲、杜若、芙蓉花、露草、撫子、鉄線花、朝顔、薊、柳、フトイ
※菖蒲花は5~6月、紫陽花は6~7月
秋掛け
時期: 9~11月
桔梗、女郎花、ススキ、萩花、竜胆、菊花、紅葉
冬掛け
時期: 12~2月
福寿草、南天、梅花、万年青、寒牡丹、山茶花、水仙、蘭
画題(図柄)の説明
情景・風景
山水(さんすい)
「遠く雲上の連なる山々 流れくる清流」
その自然を愛しみ育んできた人々の心に深く語りかけ、ほのぼのとしたやすらぎと安堵感を与えてくれる山水画。
特に「水墨山水」に表現される世界は、墨の濃淡を活かし、東洋的清閑・素朴さを表し、また「彩色山水」は、豊かな情景を端的にしかも潤いのある世界を演出してくれます。
技法の上では、大旨「大和絵(日本画)」と「南画」に区別され、南画の手法は大陸的な大胆さを運筆に凝らして、自然の厳しさを力強く表現し、画面に表れます。対して日本画の手法は、緻密な日本人の気質を具体化するかの如く、自然の恩恵を繊細且つ情感豊かに捉えています。
画面に表現する風景は、取りも直さず自然への畏敬であったり夢や憧れの世界でもあります。自然との同化と自立を繰り返してきた人間にとって、大地としての《山》や滔々(とうとう)たる川《水》は、生命の源であり在るかぎり尊厳な存在でありつづけます。 画中の家は財産を守り、橋や滝は人が訪れて家が栄え、川は喜びや幸せを運び、また長寿を願って老人を描くものと古来より言い継がれております。季節感の無いものは、年中を問わず普段掛けとして御使用頂けます。
花鳥風月(かちょうふうげつ)
木々の緑、佳色に染まる四季それぞれの花、そこに集う虫や鳥たち。
春夏秋冬、季節の訪れ、移り代わりを告げる自然界の生命の表現は、私達の心に安らぎと潤いをもたらせてきました。
愛しみと憬れに満ちた花鳥風月を身近に、めでたい心情は古今を問わず、色彩画の代表的モチーフとして用いられ尊ばれています。
慶事
旭日(きょくじつ)
青海波から顔をのぞかせた太陽が輝きを増して天に昇ろうとする新春風景です。
命の再生を象徴する太陽は古来よりおめでたく、人々の崇拝の対象とされてきました。
すがすがしい気持ちでお正月を迎えるのにふさわしいとされています。
高砂(たかさご)、尉姥(じょうとうば)
相生の松を背景に白髪の夫婦と鶴亀が描かれており「共に白髪になるまで夫婦仲が良い様に」という願いが込められています。
夫婦仲良く「お前百までわしゃ九十九まで」と、それぞれの手に熊手と箒を持っています。 尉の熊手には「福をかき集める」・姥の箒には「邪気を払う」 という意味があり、末永く・円満に人生を共に全うできるようにとの願いが込められています。
ご結婚祝い・金婚記念掛けとしてお使い頂けます。
蓬莱山(ほうらいさん)
蓬莱山は中国のはるか東方の海上にあり、不老不死の仙人が住むとされる理想郷です。
俗人を寄せつけぬ峻厳な山塊の中に楼閣があり。
また、全山に群生する松竹梅鶴亀、山上の旭日と瑞兆が配されたまことにおめでたい図柄です。
七福神(しちふくじん)
昔からおめでたい神として崇められている七人の神様。
(大黒天、恵比須、毘沙門天、弁財天、福禄寿、寿老人、布袋)
大黒天(だいこくてん)
食物・財福を司る神様。頭巾を被り、打出の小槌を持って大きな袋を担いでいる。
恵比須(えびす)
商売繁盛・五穀豊穣をもたらし、商売の神として信仰されている神様。烏帽子を付けて釣り竿を持ち、左手に鯛を抱えている。
毘沙門天(びしゃもんてん)
仏法を守る福徳増進の神様。怖い顔で、鎧兜を着ている。
弁財天(べんざいてん)
七福神の中で唯一の女神、音楽・財福・知恵の神様。
福禄寿(ふくろくじゅ)
長寿と福禄をもたらす神様。背が低くて頭が長く、長い髭を生やしている。
寿老人(じゅろうじん)
長寿と福禄をもたらす神様。背が低くて頭が長く、長い髭を生やしている。
布袋(ほてい)
慈しみと和合の神様。坊主頭で太っており、腹が大きく袋を背負っている。
【布袋図】大きな腹を突出し、杖と日用品の一切合財を入れた大きな袋を持つ弥勒菩薩の化身と言われる。福徳を招く守護神として愛され、古来から多くの画人が好んで描いた図柄。
草花
松竹梅(しょうちくばい)
松、竹、梅、3つとも寒さに耐えるところから「歳寒の三友」と呼び、めでたいものとして慶事に使われる。
四季草花(しきくさばな)
四季を代表する草花(梅花、牡丹、菖蒲、菊花、椿他)をひとつにまとめた図柄です。
四君子(しくんし)
梅、菊、蘭、竹の4つの植物を称えた言葉。
君子とは徳が高い人格者で、清らかで高潔な人のこと。
「蘭」はほのかな香りで、品格があり。
「竹」は寒中においても青々として、まっすぐに伸びること。
「梅」は雪の中、春の訪れを告げて最初に花を咲かせる強さ。
「菊」は邪気を祓う延命長寿の花。
動物
鶴亀
「鶴は千年亀は万年」と言われているように、どちらも長生きする動物の代表です。
無垢を想わせる白い容姿の鶴と、堅くて丸い甲羅を持つ亀は、まさに長寿祈念にふさわしいと言えるでしょう。
海老
曲がった腰と長い髭に、脱皮を繰り返すことから古来より縁起が良く、長寿の象徴とされています。
龍、雲龍、登り龍
龍は白虎、朱雀、玄武とともに、都の守護神として日本に伝わりました。高松塚古墳の壁画のモデルとしても有名です。頭はらくだ、眼は鬼、爪は鷹、掌は虎を模すといわれ、日本画では吉祥画として多くの画人に描かれてきました。
神仏の化身として想像を絶する活躍をするという龍は、自由に飛行し雲を興し恵みの雨を降らせるなど隆盛運をもたらす架空の動物です。
登竜門の逸話に、黄河上流の難関「竜門」を跳んだ鯉が化身したともあるように、万難を排して目標成就に努力を志ざせば道が開かれるとあります。
家の守り神として一年を通してお楽しみ頂けます。
虎
虎は邪気を払う魔除けや福を運ぶ軸として床に掛けて鑑賞いただけます。
一年を通してお楽しみください。
鴬(うぐいす)
ウグイス科の小鳥。益鳥であり繁殖期にはホ-ホケキョと鳴き、春告鳥とも言われています。
日本画では早春(2~3月)掛けとして、梅に鴬之図等が好んで描かれております。
鯉の滝昇り、登竜門、躍鯉
中国には「鯉が黄河の上流にある龍門の瀧を昇り、龍と化す」と言う登竜門の伝説があります。
滝を上る鯉は学業成就、立身出世・繁栄の象徴とされ、男子誕生のお祝いや年中掛けとしてとても縁起の良いものです。
※男の子の健やかな成長を願って端午の節句の掛軸として、涼を感じる夏掛けとしてもおすすめです。
鮎、飛鮎
【時期: 3~9月】
鮎は清楚な姿をした川魚の王様で、泳ぐときに体側の銀白がきらりと輝く、美しい姿をした魚です。また、石苔を常食するために淡白な上品な味で、わたの独特の香気も珍重されています。そのため、「香魚」と題して日本画でも人気の高い夏の風物詩です。
鮎走ると形容されるように俊敏で、1m以上の滝をも飛び越える軽快さもあります。
翡翠(ひすい)、川蝉(かわせみ)
【時期: 主に夏】※日本画では夏の図が多く描かれています。
川蝉はその美しさから「飛ぶ宝石」と呼ばれ、漢字では「翡翠」と書きます。
また英語ではKingfisher(魚捕りの王様)と名付けられています。
鴨(かも)
ガンカモ科の水鳥。多くは水鳥として秋に飛来し、春には北へ帰っていく渡り鳥。
雁(がん)
ガンカモ科の水鳥。体は鴨より大きくて、秋にシベリアより来て春に帰る。
群をなして飛んで来る光景がよく見られる。
行事
桃の節句
【時期: 2~3月】
古くから女の子の健やかな成長を願い、厄を祓う行事として生活の中に定着してきました。
雄雛、雌雛に平安貴族の装束を模した衣装が着せられ、優美な姿は五節句のひとつとして旧暦の3月3日に祝われてきました。
この行事は本来旧暦で祝われていたため、立春(2月4日)の頃から3月いっぱい掛けてお楽しみいただけます。
端午の節句
【時期: 4~5月】
古く奈良時代から続く年中行事で、鎌倉時代頃から「菖蒲(しょうぶ)」が「尚武」と同じ読みであることや、菖蒲の葉が剣の形を連想させること等から、端午は男の子の節句とされ、床の間には武者や菖蒲・鍾馗の掛軸を掛け、男の子の健やかな成長と健康を祈り、厄除けを祈願する様になりました。