掛軸各部の名称・取り扱い

商品説明の見方

掛軸のイメージ

寸法の表記

本紙 幅 (あ) × 高さ (い) cm
総丈(表具) 幅 (う) × 高さ (え) cm

各部の表記は本図の各部分を表します。
床に掛ける際は、え+Aの部分の紐のたるみを約2~3cm程度余裕を見てください。

本紙の表記

本紙とは画家によって直接描かれた作品のことで、絹布(けんぷ)に描かれたものを絹本(けんぽん)、和紙に描かれたものを紙本と呼びます。

商品名の表記

尺五横 約一尺五寸幅の本紙に描かれた横物の短い掛軸
尺八横 約一尺八寸幅の本紙に描かれた横物の短い掛軸
尺五立 約一尺五寸幅の本紙に描かれた立物の長い掛軸
尺八立 約一尺八寸幅の本紙に描かれた立物の長い掛軸

※一尺五寸 = 約45cm/一尺八寸 = 約54.5cm
※本紙は表装の時に両端を裁断するため、実際の長さは表記よりも若干短くなります。

箱の表記

二重箱

掛軸を収めた箱を、更に別の箱で二重に包んだ箱。

二重箱
二重箱

共箱

作者本人が署名捺印した箱。

共箱
共箱

鑑定箱

雅号などを作者が自署したもの。

合せ箱

箱のない作品に、大きさに合わせて後から保管のために作った箱のこと。用心箱とも呼ばれる。

扇面の寸法表記

掛軸のイメージ

本紙が扇面の場合のサイズ表記は本図のようになります。表具部分のサイズ表記は普通の掛軸と同じです。

本紙 幅 (W) × 高さ (H) cm

その他の表記

元裂(もときれ)

当店が扱う作品は明治から昭和にかけて作成されたものが中心で、中には長い歳月の経過による「焼け・染み」がある掛軸もあります。そのような場合、お客様のもとに美しい状態で観賞いただくために、染み抜き・表装のやり替えを行っております。
多くの掛軸は現代の裂(きれ)を使って表装しますが、作者が高名な画家の場合は中の作品に合わせて表装の裂もずいぶんと立派なものが使われています。そのため、当店ではできるだけその裂を残して当時の状態で見ていただけるよう努力しています。そのような裂を使って新たに表装した作品には【元裂を使って仕立て直し】の表記がありますので、作品をご覧になるときの参考にしてください。

軸先の種類

象牙、骨(牛骨)、塗物、竹、プラスチック、樹脂、唐木(黒檀・紫檀・花梨・桜)、陶器・焼物、象牙蓋(軸先に象牙を加工した蓋を貼り付けたもの)

落款(らっかん)

雅号などを作者が自署したもの。

印章(落款印)

落款(らっかん)とともに作品の完成時に押される印で、時代や作品によって多くの種類が使い分けられます。

仕立て直し

作品制作時に表装された掛軸は長い年月が経過しているため、天地や中廻しの部分に汚れや損傷が見られる場合があります。作品を当時の状態で美しく鑑賞いただくために、当店ではそのような掛軸を解表(掛軸を解いて、中の作品を取り出すことを)して、作品を洗い、新たに表装をやり直しています。
このように今日の新しい裂を使って昔の作品を表装し直すことを「仕立て直し」と表記しています。表装はこのように仕立て直しを繰り返して、末永く作品を鑑賞できるように考案された日本独自の伝統技術で、将来の解表に備えて、接着剤には伝統的な糊が使われています。

天地替え(天地取替え)

表装全体をやりかえる「仕立て直し」とは異なり、表具の天と地の部分(本項下の各部の名称を参照)を新しい裂と交換したものを「天地替え」と言います。表装は各部を糊と和紙で継いで、必要な時にそれを解いて新しい裂と交換できるように考案された日本独自の伝統技術で、最も傷みを受けやすい天地の裂だけを交換することもできます。

鎹(かすがい)

一般的には「子はかすがい…」というように、二つのものを繋ぎ止める意として使われますが、表装の用語では本紙の折れた部分に裏から細い和紙をあてて補強する意味で「かすがいをあてる」などと用いられます。かすがいは表からは見えないので、鑑賞には何ら問題はありません。

太巻き芯棒(ふとまきしんぼう)

岩絵具の剥離・折れ等を防ぎ、作品の状態を出来るだけ良好に保つためのものです。

各部の名称

掛け軸のイメージ

本紙

画そのもののことで、その本紙の形が縦長の掛軸を竪物、横長のものを横物(横幅)と言います。材質は絹(絹本 → 生糸で平織りのもの)、絖(絖本 → 練糸で繻織りのもの)、紙(紙本)の3種類があります。

一文字

本紙の上下に付いた幅の狭い横長の裂(きれ)のこと。名物裂などが用いられる。

風帯(ふうたい)

天の部分に下げられた縦長の二本の裂のこと。驚燕(きょうえん)とも言い、ツバメが入ってきたときに驚かすためのもの。中国の掛軸には見られず、日本独自の美意識によるものだと言われており、一般的には一文字と風帯は同裂が用いられます。

露(つゆ)

風帯の先端に付く小さな房状の飾り。

中廻し

風中縁とも言われ、一文字についで上等な裂を用いる。本紙の左右の部分を柱と称します。帯の先端に付く小さな房状の飾り。

天地

「上下」とも称する。また、柱の部分に繋げてまわしたものを総縁という。緞子などの比較的渋めの裂を用います。

軸木

掛物を巻くための芯、掛けるための重しになるもので、杉材を用いることが多い。内に鉛を入れたものもあります。

軸先

軸木の両端に付けた円筒形のもので、軸首とも言います。
象牙や塗物、鍍金、水晶、陶器、堆朱、唐木、竹などが用いられます。

表装の形態

掛軸の表装の形式は、真・行・草の三つの段階があります。さらにそれぞれ細分化して八段階に分類されています。
近年では、これほどまでの分類は必要とされず、通常仏画仕立て、大和仕立て(三段表具)、袋表具(文人表具)などに区別するのが一般的です。

大和表装

真の表具

仏仕立の表装のことで、仏画、曼荼羅、神号、道号など主に宗教的内容の絵や書に用います。本紙の周りに一文字、中廻し、総縁がまわされ風帯が付きます。

行の表具

仏仕立の表装のことで、仏画、曼荼羅、神号、道号など主に宗教的内容の絵や書に用います。本紙の周りに一文字、中廻し、総縁がまわされ風帯が付きます。

草の表具

輪補表具や茶掛表具とも呼ばれます。行の表具に近い仕立てのもので、中廻しの幅を極端に狭めたものです。これらは茶人の書画、文人や俳人の画賛もの、禅僧の墨跡や一行書などに用いられます。

文人表装

袋表具や丸表具とも呼ばれます。中国から伝わったままの形式で、南画や文人画、漢詩などに用いられます。

掛軸の保管方法

掛軸は湿気が一番苦手で、湿気ることで虫を呼んだり、シミ・カビの原因ともなります。
梅雨の時期や湿気の多い日に掛けた場合は、一旦閉まっても乾燥した日にもう一度陰干しすることをお薦めします。
また掛軸は、年に2回程度、春秋の晴れた日に虫干しをし、専用の防虫香を入れ替え、湿気の少ない場所に保管してください。

掛軸の掛け方

手順 1

軸を箱から出し掛紐をはずし、巻紙を取り、たたみに軸を置きます。
天の部分まで広げ、風帯を下にのばし折れ癖がないか調べ、癖がある場合は指先でこれを直します。

掛け軸を掛ける様子

手順 2

矢筈(やはず)を紐に掛け、掛軸の真中を左手で持ち、釘に掛けます。
掛けた後は矢筈を置き、まず軸棒の右端を右手で持ち、次に左端を左手で持ってそのまま両手で静かにたれ下ろします。
掛け終えたら、軸が正しく下がっているかをよく確認しましょう。高さの調整は掛軸専用の自在掛をお使い下さい。
矢筈・自在掛は、お近くの美術店かホームセンター等で購入できます。
※予期せぬ事態で掛軸が脱落することも予想されますので、掛軸を掛ける際には下に大切な物(花瓶・置物等)を置かない様にしましょう。

掛け軸を掛ける様子
掛け軸を掛ける様子

掛軸のしまい方

手順 1

矢筈を壁に立て掛けてから、両手で軸先を持って中央まで巻上げます。
次に左手は軸の真中を持ち、右手で矢筈を持ち、釘からはずした軸をたたみの上に置きます。

掛け軸をしまう様子

手順 2

風帯を折り込みます。左の風帯は右に、右の風帯は左へ折り返します。
※風帯を垂らしたまま巻き上げると、次回掛ける時にぐるぐる巻きになっていますのでお気をつけください。

掛け軸をしまう様子
掛け軸をしまう様子

手順 3

当紙(あてがみ)(※巻紙・紐下(ひもした)とも言う)を敷いて巻いた後に、写真の順序で掛紐を巻いて桐箱の中に納めます。

掛軸を結ぶ様子
掛軸を結ぶ様子
掛軸を結ぶ様子

手順 4

納め方(箱への置き方)は軸枕に軸先を入れます。軸枕は幅の広い部分と狭い部分がありますので、広い部分に軸の八双(軸上部の半月形の木)をあてると納まりが良いです。

掛け軸のイメージ

太巻き芯棒の取り扱い方

太巻き芯棒は、岩絵具の剥離・折れ等を防ぎ作品の状態を出来るだけ良好に保つためのものです。
基本的には普通の掛軸と同じ掛け方です。

太巻き芯棒が付いた掛軸の掛け方

太巻きの掛軸
太巻きの掛軸
掛け終わったら軸棒に挟んである太巻き芯棒を外し、桐箱の中へ収納してください。
太巻き芯棒を外した状態

太巻き芯棒が付いた掛軸のしまい方

太巻き芯棒を開いた様子
太巻き芯棒は軸棒を挟むために蝶番が付いて二つに開きます。
太巻き芯棒を開いた様子
太巻き芯棒を閉じる様子
太巻き芯棒を閉じる様子
軸棒に太巻き芯棒を挟んだら、後は普通の掛軸のしまい方と同じです。
太巻き芯棒を閉じる様子
太巻き心棒を挟んで巻いて下さい。
太巻きの掛け軸をしまう様子
巻き終わった状態です。
箱に収まった太巻きの掛軸
桐箱に収めていただけたら終了です。

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