
画格に釣り合った上質な本緞子裂地が使われております
表装は当時の裂地を解いて、
新たに仕立て直しましたので、
本紙の絵を引き立てる落ち着いた本緞子表装を再現する
ことができました。

※春挙先生は大自然の厳しさと美しさを終生追求した画家で、
明治時代にアメリカのロッキー山脈をみずから写真に収めて山の描法を研究したことは有名です。
この作品は、墨の濃淡と滲(にじ)みを使い、狗子(いぬっころ)の流麗な輪郭線をみごとに描きだしています。
また、上質な本緞子裂地があてられております。
掛軸全体が品格のある重厚なものに仕立てられた、先生中年期の芸術の香り高い佳品をご堪能ください。
「狗子」と題されたこの作品では春挙先生によって可愛い子犬の寝姿が
優しいまなざしをもって描かれています。また、このような活き活きとした子犬の描写は先生の鋭い観察力と巧みな筆力によって支えられています。
子犬の体躯は淡墨と濃墨を穂先につけた一筆の線で表現され、その線の太さや細さや濃淡が効果的に使われています。また、丸みを帯びて柔らかな右手や
からだの白い毛並みは絹地の白い余白を残すことで立体感をもって描かれています。
頭部や体躯の茶斑は面がある刷描きによってその特徴が的確に捉えられ、
閉じられ目元や鼻先は紙本の滲みの効果を利用して巧みに表現されています。
春挙先生の子犬を慈しむ温かなまなざしとそれを支える卓抜な筆力を
ご堪能ください。



※本紙に汚れのように見えるものが混入していますが、これは麻紙に最初から含まれる自然物です。
素朴な和紙本来の味わいがあり、作品の表現をより効果的に演出しています。
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